バイ・リクエスト

By Request

  • 初回発売日:
    2000年3月15日

  • レーベル:
    A&M - ポリドール

  • プロデュース:
    リチャード・カーペンター

日本のファンからのリクエストに応えた1枚

カーペンターズは、その美しいハーモニーと心に残るメロディーで、多くの人々に愛されてきました。そんな彼らのデビュー30周年を記念して、2000年に日本でリリースされたアルバム「バイ・リクエスト」は、特別な意味を持つ作品です。このアルバムは、通常のベストアルバムとは異なり、日本のファンからのリクエストに応じて構成されている点が特徴です。今回は、このアルバムの魅力や背景について詳しく解説していきます。

デビュー30周年を記念して作られたファン目線のアルバム

「バイ・リクエスト」は、カーペンターズのデビュー30周年を祝うために、1999年に企画され、2000年に日本限定でリリースされました。このアルバムが特に注目される理由は、日本のファンから寄せられたリクエスト曲で構成されている点です。アルバムを制作する際、通常アーティストやプロデューサー側が選曲しますが、このアルバムは異例ともいえる形で、ファンの声を直接反映しています。

ファンにとって「これぞカーペンターズ!」という名曲が詰まった一枚でありながら、選曲にはファンの個性や感性が表れているため、他のベストアルバムとは異なる特別な一体感を感じることができます。この企画により、カーペンターズが日本のファンを大切にしている姿勢が改めて感じられるアルバムとなっています。

定番のヒット曲から隠れた名曲までを網羅

このアルバムには、カーペンターズの代表的なヒット曲はもちろんのこと、一般にはあまり知られていない隠れた名曲も多数収録されています。たとえば、定番の「遥かなる影((They Long To Be)Close to You)」や「愛のプレリュード(We’ve Only Just Begun)」などの世界的ヒット曲はファンには欠かせない一曲ですが、同時にアメリカではシングル・カットされなかった「微笑の泉(Can't Smile Without You)」のような曲も含まれており、これが選ばれた理由にも日本ならではの感性が現れています。

さらに、このアルバムにはリクエストによりあまり頻繁に紹介されることの少ない曲も含まれているため、ファンにとっては新たな発見があると同時に、カーペンターズの音楽の幅広さを再確認することができます。彼らの音楽は、ポップスやバラードだけでなく、クラシックやフォークの要素も取り入れられているため、多彩な魅力が詰まった作品です。

日本でのリバイバルのきっかけとなった「青春の輝き」

収録曲の中で、日本のファンにとって特別な意味を持つのが「青春の輝き(I Need to Be in Love)」です。この曲は、カーペンターズの中でも日本での人気が非常に高く、1995年にテレビドラマ『未成年』のエンディングテーマとして採用されたことで、リバイバルヒットのきっかけとなりました。

1976年に発表されたこの曲は、カーペンターズの他のヒット曲と比べるとアメリカでの成功は控えめでしたが、日本ではその切ない歌詞とカレンの優しい歌声が強く支持されました。

ファンからの熱い想いが込められたブックレット

このアルバムのもう一つの特徴は、ブックレットに込められたファンの想いです。このアルバムのブックレットには、選曲に対するファンのコメントや思い出が17ページにわたって綴られており、彼らの音楽が日本のファンにどれだけ深く愛されているかを感じることができます。

興味深いのはファンから贈られたメッセージの中には「この世の果てまで」や「輝く船出」など、このアルバムに収録されていない楽曲も含まれていることです。制作の都合でアルバムに収録されなかった楽曲に対するメッセージも掲載されることで、ファンがどれだけ幅広い楽曲を愛しているかが伝わってきます。このようなメッセージは、リチャードとカレンが生み出した作品が多くの人々の心に響いている証といえるでしょう。ファンの想いが形になり、アルバムがさらに特別な存在となっていることは間違いありません。

収録曲のほとんどはリミックス

このアルバムに収録された曲の多くは、オリジナルバージョンではなくリミックスされた音源です。リミックスとは、元の楽曲に新たな編集やミキシングを加え、音質やアレンジを現代風に調整する作業のことです。このアルバムでは、カーペンターズの楽曲がよりクリアなサウンドに仕上げられ、アレンジや音響効果に細かな変化が施されています。

リチャードは、カーペンターズの音楽を時代に合わせた形で新しい世代にも届けたいという思いから、これまでにも多くの楽曲にリミックスを施してきました。このアルバムでもその考えが反映され、過去の名曲が新たな命を吹き込まれています。例えば、「イエスタデイ・ワンス・モア」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」などのヒット曲も、音の細部にまでこだわったサウンドで愉しむことができます。

リチャードがこだわるリミックスの方針

リチャードは、カーペンターズの楽曲に対する独自の方針を持っています。それは、オリジナルの音源はオリジナル・アルバムで愉しむべきであり、ベスト盤やコンピレーション・アルバムではリミックスを採用するというものです。この方針によって、このアルバムでも多くの曲がリミックスされています。

リチャードの考え方は、オリジナルのアルバムにはその時代のサウンドや雰囲気を大切に残すべきだという意図がありますが、ベスト盤などの作品では、現代のファンにもより愉しんでもらえるように、音質の向上やアレンジの微調整を施すことを目指しています。このようなリミックスにより、カーペンターズの音楽は常に新鮮さを保ちながら、多くの人々に愛され続けているのです。

ファンとカーペンターズの絆が生み出したアルバム

カーペンターズが長年愛され続ける理由の一つは、ファンとの深い絆にあります。彼らの音楽は、どの時代でも共感を呼び、世代を超えて聴かれ続けてきました。この絆が生み出したアルバムは、カレンとリチャードが持つ音楽的才能だけでなく、ファンの期待や思いに応えようとする真摯な姿勢が反映されています。各アルバムに込められたメッセージは、ファンの心に寄り添い、彼らと一体感を感じさせるものとなっています。このようにしてカーペンターズとファンは、音楽を通じて強い絆を築き上げ、共に歩み続けているのです。

この作品に対する私の歩み

このサイトではカーペンターズの歴史を正しく後世に伝えるべく、できる限り主観的要素を避けて解説していますが、ここからはこの作品のコンセプトに沿ってあえて「カーペンターズと歩んできた私」という観点でお話ししたいと思います。

12年生(高校3年生)の春、ポリドール盤への違和感

私がこのアルバムの存在を初めて知ったのは、発売から2年が経った2002年の春でした。当時の私は12年生(高校3年生)。身近にあったカーペンターズといえば1995年に発売された『青春の輝き〜ベスト・オブ・カーペンターズ』のみで、このCDをきっかけにポリドールからリリースされていたオリジナルアルバムのCDシリーズ(POCMシリーズ)を、一枚一枚熱心に揃え始めていた時期でした。

しかし、聴き進めるうちに、私はある種の「違和感」を抱くようになります。80年代にCD向けにリチャードが施したリミックス音源であったPOCMシリーズの響きは、どこか自分の理想とする「現役時代の空気」と乖離しているように感じられたのです。その違和感ゆえに、当時の私は『バイ・リクエスト』というリミックス主体のベスト盤を、あえて「スルー」するという選択をしました。

大学進学、そしてユニバーサルへの転換

その違和感が「確信」に変わったのは、大学に入学したばかりの2003年のことでした。ポリドール時代のCD音源が、実はオリジナル・アナログ盤の音像とは異なるものであると気づいた私は、すぐさま当時ユニバーサルから展開されていた「UICYシリーズ」へと買い直しを始めました。ちょうどこの年、デビュー35周年のボックスセットが発売され、30周年ボックスの存在を知った頃にはすでに市場から消えていたことへの悔しさから、告知当日に大学最寄りのCDショップに予約しに行ったのを今でも鮮明に覚えています。

オリジナル・マスターの響きを追い求め、20代の多くをその探求に捧げていた私にとって、やはり当時の『バイ・リクエスト』は、まだ手にするべき時ではない「遠い存在」だったのです。

2018年、旋律が塗り替えられた日

その頑なな考えが180度変わる転換点が訪れたのは、それから16年後の2018年のことでした。リチャードが手掛けたロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とのコラボレーション作品を耳にした瞬間、私の中にあったリミックスに対する概念が根底から覆されたのです。

カレンの歌声を現代の最高技術で蘇らせ、新しい息吹を吹き込むリチャードの仕事。それは過去の改ざんではなく、彼女の歌声を未来へと繋ぐための「深化」であると確信しました。この時を境に、私はリチャードが施してきたリミックスワークの真意を、もう一度一から学び直したいという衝動に駆られたのです。

2024年、カリフォルニアの魔法を経て

そして2024年。デビュー55周年を祝うカリフォルニアでの特別な時間は、私に決定的な魔法をかけました。現地で触れたリチャードの情熱、そして世界中のファンとの交流。そこには、時代を超えて愛され続ける音楽の「生命力」がありました。

イベントが終わって間も無く、私は本サイト「CARPENTERS then & future」の立ち上げを決意し、アーカイブの再構築を開始しました。その過程で、かつて背を向けたこの『バイ・リクエスト』が、実は日本のファンとリチャードが結んだ「20世紀最後の公的な約束」であったという、その唯一無二の重要性に気づかされたのです。

2025年、四半世紀越しの「ミッシングリンク」

2025年、発売から25年を経て、ようやく私はこの盤を手に取りました。
POCMシリーズを必死に集めていた高校生のあの日には分からなかった、ブックレットに溢れる日本のファンたちの熱烈な想い、そしてポリドール時代の終焉を飾るリチャードの丁寧な音作り。

23年という歳月を経てようやく私のアーカイブに加わったこの一枚は、単なる欠落の補充ではありません。それは、私自身がカーペンターズと共に歩み、葛藤し、そしてたどり着いた「真実」の証明でもあります。今、このアルバムにレーザーを照らすたび、私はあの頃の自分と、そしてカレンの変わらぬ歌声と、静かに対話を続けています。

楽曲解説とエピソード

このサイトでは通常、各楽曲について歴史的・技術的な観点から客観的に解説していますが、ここでは『バイ・リクエスト』のコンセプトに寄り添い、各楽曲にまつわる私個人のエピソードや想いを紹介します。

なお、楽曲の成立背景やレコーディングデータなどの客観的な解説を読みたい場合は、各楽曲が収録されているオリジナル・アルバムの解説ページへのリンクを用意しています。そちらから「正史」の世界へと移動していただくことが可能です。

曲目リスト

  1. イエスタデイ・ワンス・モア
    Yesterday Once More

    初めてこの旋律に出会ったのは小学4年生の時、テレビCMから流れてきたカバーバージョンでした。当時はそれがカバーであることも、ましてやカーペンターズの名曲であることすら知りませんでした。

    小学6年生になり、親のカーステレオから流れる本物の歌声に触れ、ようやく「カーペンターズ」という存在を認識。しかし、7年生(中学1年生)の時に姉が購入した『青春の輝き〜ベスト・オブ・カーペンターズ(22 Hits Of The Carpenters)』を聴いた際、カーステレオの記憶と照らし合わせて瞬時に「何かが違う」とリミックスの違和感を見抜いたのは、今思えば私の「耳」の原点だったのかもしれません。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Now & Then』の解説を見る]

  2. 明日への旅路
    Road Ode

    この楽曲を初めて知ったのは12年生(高校3年生)の時、POCM-1812(アルバム『A Song For You』)を手にした時でした。その孤独で美しいメロディーは、受験勉強に追われる日々、学校や塾から帰る夜道でいつも私の頭の中に流れていました。

    この曲は1973年、シングル「イエスタデイ・ワンス・モア」のB面に収録された際、アルバム・バージョンがそのまま使用されたため、末尾に次曲「ア・ソング・フォー・ユー(リプライズ)」へと繋がるハープの演奏が混じっていました。しかし、本作ではリミックス(1990年)によってそのハープが丁寧に取り除かれ、独立した一曲として完璧に完成されています。

    ※本作収録:1990年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『A Song For You』の解説を見る]

  3. 青春の輝き
    I Need to Be in Love

    カレン自身が最も気に入っていたというこの曲は、今でも私の姉が一番のお気に入りに挙げている曲でもあります。2001年末のNHKラジオ番組「カウントダウン・カーペンターズ」での人気投票では3位でしたが、2022年の「ディスカバー・カーペンターズ」ではダントツの1位に。

    この順位の変遷は、1995年のリバイバルがいかに若い世代に浸透したか、そして現在のカーペンターズを支える層が次世代へと確実にバトンタッチされていることを象徴しています。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『A Kind Of Hush』の解説を見る]

  4. ミスター・グーダー
    Mr. Guder

    小学6年生の時、親のカーステレオから流れてきたのが初対面でした。当時はディズニーランド時代の風刺を込めた軽快な一曲として楽しんで聴いていましたが、社会に出て組織の一員として経験を積む中で、この曲の歌詞が持つ「リアリティ」を初めて真に理解することになりました。

    規律や慣習に縛られることの滑稽さや、そこから生じる人間模様を鮮やかに描き出したリチャードの鋭い観察眼。大人になってから聴き直すことで、子供の頃には気づかなかった楽曲の深みに改めて驚かされた一曲です。

    ※本作収録:1990年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Close to You』の解説を見る]

  5. ユー
    You

    初めてこの曲の美しさに触れたのは12年生(高校3年生)の時。POCM-1815(アルバム『A Kind of Hush』)での出会いでした。アルバムジャケットの落ち着いた色合いも相まって、紅葉の季節、街路樹や公園の木々の下を歩きながら聴きたくなるような、深い情緒を感じさせる一曲です。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『A Kind of Hush』の解説を見る]

  6. ワン・ラヴ
    One Love

    12年生(高校3年生)の時、POCM-1811(アルバム『Carpenters』)で出会いました。リチャードがかつて想いを寄せた女性「キャンディ」への曲が原型であること、そして2023年の来日公演でリチャードがこの曲をピアノソロで奏でた瞬間は、私の人生における大切なアーカイブの一つです。

    ※本作収録:1994年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Carpenters』の解説を見る]

  7. 微笑の泉(シングル・バージョン)
    Can't Smile Without You (Single Version)

    12年生(高校3年生)の時、POCM-1815で出会いました。本作に収録されているのは、アルバム・バージョンとは歌詞もメロディーも全く異なる貴重な「シングル・バージョン」です。

    2006年の『シングル・コレクション・ボックス(Japanese Single Box)』で初めてこのバージョンを聴いた際の新鮮な驚きは忘れられません。CDというデジタル媒体でありながら、カレンの繊細な息遣いまでもが間近に感じられる、リチャードのリミックスへの執念が結実したテイクです。

    ※本作収録:1997年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『A Kind of Hush』の解説を見る]

  8. ハッピー
    Happy

    2024年の55周年イベントにて、参加者の皆さんに私の名前の意味を紹介した際、私の頭の中で鳴り響いていたのがこの曲でした。

    「博幸」の幸は“Happy”。そして「博」は広く通じるプロフェッショナルを意味し、日本では「匠(たくみ)」とも呼ばれます。匠とは建物を建てる人、すなわち英語で“Carpenter”。リチャードたちの音楽を守り、伝える活動をしている私が「Happy Carpenter(博幸)」という名を持っていることに、不思議な縁を感じずにはいられません。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Horizon』の解説を見る]

  9. 愛のプレリュード
    We've Only Just Begun

    ここから『トップ・オブ・ザ・ワールド』までの曲順は、1995年のベスト盤、『青春の輝き〜ベスト・オブ・カーペンターズ(22 Hits Of The Carpenters)』と同じ構成です。

    元々は銀行のCMソングであり、結婚式の定番曲として親しまれてきましたが、今ではその枠を超え、何かが新しく始まる瞬間の「高揚感」と「希望」を象徴するアンセムへと昇華されたと感じています。人生の節目に寄り添う、まさに真実のプレリュードです。

    ※本作収録:1985年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Close to You』の解説を見る]

  10. スーパースター
    Superstar

    初めてこの曲に出会った7年生(中学1年生)の頃、そのあまりにも深い孤独の色に圧倒されました。歌詞の意味を理解するにつれ、憧れの世界から遠く離れた場所にいる自分を惨めに感じながらも、惹かれずにはいられない……そんな思春期特有の激しい葛藤に苛まれた、忘れられない一曲です。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Carpenters』の解説を見る]

  11. 雨の日と月曜日は
    Rainy Days and Mondays

    カーペンターズのコンピレーション・アルバムは「スーパースター」と本曲はこの順番でセットになっていることが多いのが特徴で、かつての私は、「スーパースター」から続くこの曲のブルーな世界観に心が沈みすぎてしまうのを避け、あえてシャッフル再生でバラバラにして聴いていました。しかし、この絶望的なまでに美しい2曲が並ぶことで一つの深いストーリーが完結することに気づいたのは、実はつい最近のこと。リチャードがこの順列に込めた意図を、ようやく理解できた気がします。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Carpenters』の解説を見る]

  12. トップ・オブ・ザ・ワールド
    Top of the World

    私のすべての始まりであり、原点。小学3年生の時にCMで聴いて一目惚れした曲です。3年後に親のカーステレオでフルバージョンを聴き、ようやく曲名とアーティストが一致しました。

    しかし、翌1997年に姉が購入したCDを聴いた際、幼いながらも瞬時に「カーステレオの音と違う」というリミックスの違和感に気づきました。これが、私の「耳」がレコードのプレス違いやオリジナル・マスターを追い求める旅の第一歩となったのです。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『A Song For You』の解説を見る]

  13. 遥かなる影
    (They Long to Be) Close to You

    7年生(中学1年生)の時に初めてこの曲に触れました。その邦題から、夕暮れ時にどこまでも長く伸びていく影を連想し、自身の過去の記憶と深くシンクロさせたのを覚えています。その強い思い入れは、私の中学校の卒業文集のタイトルにこの曲名を冠したほどでした。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Close to You』の解説を見る]

  14. あなたの影になりたい
    Let Me Be The One

    12年生(高校3年生)の時、POCM-1811(アルバム『Carpenters』)で出会いました。その後すぐに4枚組ボックスセット『カーペンターズ大全集(From The Top)』を手に入れ、冒頭のカレンによるカウントや、曲の終わりに垣間見える彼女のお茶目な一面に触れ、一気に印象が変わった一曲です。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Carpenters』の解説を見る]

  15. アイ・キャント・メイク・ミュージック
    I Can't Make Music

    12年生(高校3年生)の時、POCM-1813(アルバム『Now & Then』)で出会いました。切ない歌詞とは裏腹な壮大なメロディー、そしてアルバムカバーのイメージから、リチャードとカレンが過ごしたダウニーの街に想いを馳せていましたが、まさか社会人になってから、実際にその地を訪れることになるとは、当時の私には夢にも思わないことでした。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Now & Then』の解説を見る]

  16. シング
    Sing

    私の原点は、セサミストリートではなくNHK教育テレビ(現Eテレ)の『英語であそぼ』でした。「トップ・オブ・ザ・ワールド」に出会った頃と同じ時期、あの「ラーララ……」というフレーズが強烈に耳に残りました。それがカーペンターズの歌声だと知ったのは7年生(中学1年生)の時。ここから「涙の乗車券」までは、1995年のベスト盤と同じ構成で進みます。

    ※本作収録:1994年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Now & Then』の解説を見る]

  17. オンリー・イエスタデイ
    Only Yesterday

    7年生(中学1年生)の時に初めて聴きました。当時は歌詞の意味こそ分かりませんでしたが、その明るく軽快なテンポは、私の心にすんなりと受け入れられました。かつてリチャードとカレンがPV撮影で訪れたハンティントン・ライブラリを、2016年に私自身が訪れることになるとは、この時は想像だにしていませんでした。

    ※本作収録:1991年リミックス・バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Horizon』の解説を見る]

  18. 涙の乗車券
    Ticket To Ride

    カーペンターズ始まりの曲ですが、私にとっては非常に複雑な思い入れのある一曲です。2001年9月11日の夜、何気なくこの曲を聴いていたその時、テレビに映し出されたのは世界を震撼させたあの凄惨なテロ事件でした。それ以来、私はこの曲をまともに聴くことができなくなってしまいました。

    四半世紀近い歳月を経て、その心の傷が消え去ったと確信したのは、2024年4月27日のデビュー55周年イベントでのこと。リチャードがこの曲に対し、「1973年に録り直し、2018年のロイヤル・フィル盤でようやく完成したと思っている」と語るのを聴き、一曲の完成のために彼が積み重ねてきた果てしない時間と、音楽に対する渾身の想いに触れた瞬間でした。

    デビューから50年以上もの歳月をかけて音を磨き上げ続けたリチャードの飽くなき情熱。その誠実な歩みが、図らずも私の止まっていた23年という時間を動かし、救ってくれたのだと確信しています。

    ※本作収録:1973年再録音バージョン

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Offering (Ticket To Ride)』の解説を見る]

  19. サムタイムス
    Sometimes

    カーペンターズにとってこの曲は、コンサートの終盤を飾る特別な一曲でした。「いつもではないけれど、時々、私に良くしてくれた人のことを思い出す」という歌詞。しかし私にとって、カーペンターズは決して「時々思い出す」だけの存在ではありません。振り返れば、彼らの音楽は常に私の傍らに立ち、共に歩んでくれる人生の伴走者のような存在で、これからも変わることなくそばにいてくれるでしょう。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Carpenters』の解説を見る]

  20. 愛は永遠(とわ)に
    Look To Your Dreams

    2022年9月11日、NHKラジオ番組「ディスカバー・カーペンターズ」の放送内で、私のメッセージと共に紹介された曲です。

    当時、世の中はコロナ禍という暗闇に包まれ、「夢を見ることの大切さ」を歌うこの曲が、苦しむ人々の救いになるはずだと信じてリクエストを送りました。しかし、皮肉にも放送当日、私自身がコロナに感染し自宅療養を余儀なくされていたのです。

    番組内で自分のメッセージとこの曲が流れた瞬間、まさか自分が他者に送った言葉に、自分自身が救われることになるとは思いもせず、思わず涙がこぼれました。

    曲の終わりに残るかすかなピアノの音について、番組では「カレンを失った寂しさ」と紹介されましたが、私はそこに「どんな闇の中でも、一点だけ輝く小さな星のような希望」を見出したいと綴りました。その時、私の心の中の星もまた、再び強く輝き始めたのです。

    ▶︎[オリジナル収録アルバム『Voice of the Heart』の解説を見る]

* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。

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終わりに

あの日を境に、私の中でカーペンターズを想う気持ちが新たにされ、2023年の来日公演レポート寄稿、そして2024年の55周年記念イベントへと、道は一本の線のように一直線に繋がっていきました。

今振り返れば、あの自宅療養の静寂の中で、すでにこの「Then & Future」プロジェクトの胎動は始まっていたのかもしれません。

過去(Then)と向き合い、未来(Future)へと希望を繋ぐ。

この『バイ・リクエスト』というアルバムが、四半世紀の時を経て私の元へ届いたのも、きっと必然だったのでしょう。

村田 博幸
Hiroyuki Murata
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