カーペンターズ

Carpenters

  • 初回発売日:
    1971年5月14日

  • レーベル:
    A&M

  • プロデュース:
    ジャック・ドーアティー

カーペンターズ・サウンドが形作られていった時期のアルバム

カーペンターズの3作目となるアルバム『カーペンターズ(Carpenters)』は、1971年にリリースされました。本作は、前作『遥かなる影(Close To You)』の成功を受けて制作された作品であり、後年に知られる彼らの音楽的特徴が、よりはっきりとした形で表れ始めた一枚とされています。ここでは、カーペンターズの作品群の中でも転換点となったこのサード・アルバムについて、制作背景や内容を中心に見ていきます。

アルバムの背景

『カーペンターズ(Carpenters)』は、前作『遥かなる影(Close To You)』で示された音楽的方向性を基盤としながら制作が進められました。この時期のリチャードとカレンは、ヒットによって一気に注目を集める存在となり、多忙な活動の合間を縫ってレコーディングに臨んでいます。

アルバム全体には、親しみやすいメロディと、過度な装飾を避けた端正なアレンジが並びます。派手な展開よりも、楽曲そのものの完成度を重視した作りが特徴で、カレンの落ち着いた歌声が自然に前へ出る構成が多く見られます。この点は、後年の作品にも通じる重要な要素のひとつです。

制作はリチャード・カーペンターが中心となり、プロデューサーのジャック・ドーアティーがそれを支える体制で行われました。限られた時間の中で録音が進められたこともあり、オーケストラを大規模に用いるよりも、自分たちのバンドを軸にしたシンプルな編成が選ばれた楽曲も少なくありません。その結果、全体として統一感のあるアルバムに仕上がっています。

レコード時代の制約と向き合った構成

本作のB面には、バート・バカラックの楽曲をまとめた「バカラック・メドレー」が収録されています。これは、当時のステージで演奏されていた内容をもとに構成されたもので、複数の楽曲が途切れなくつながる形で展開されます。

リチャードのアレンジは、原曲の旋律を尊重しつつ、カレンの声が自然に映えるよう整理されており、バカラック作品特有の流麗なメロディとカーペンターズの演奏が無理なく融合しています。ひとつひとつの曲を独立させるのではなく、全体をひと続きの流れとして聴かせる構成は、当時としてはやや珍しい試みでした。

一方で、アナログ・レコードには収録時間の制限があり、ライブで演奏していたすべての曲をそのまま収めることはできませんでした。そのため、冒頭で演奏されていた「エニィ・デイ・ナウ」や「ベイビー・イッツ・ユー」は収録されず、残された楽曲もレコードの容量に合わせて構成が調整されています。こうした制約の中でまとめられたメドレーは、レコード時代ならではの事情を色濃く反映したものと言えます。

なお、このメドレーの完全な形は、1985年に発売された4枚組ボックス・セット『アンソロジー(Anthology)』で聴くことができます。

『遥かなる影』から続いていた4つのプレス工場

前作『遥かなる影(Close To You)』の制作時期から、A&Mレコードはモナーク、サンタマリア、テレホート、ピットマンの4つの工場を使ってレコードをプレスしていました。本作『カーペンターズ』でもその体制は引き継がれており、実際のレコード盤には工場ごとの刻印やマトリクスが確認できます。

同じアルバムで複数の工場プレスが存在するのは、発売当初から全米規模での流通を想定し、大量生産が行われていたためです。前作の成功によって需要が急増していたこともあり、制作や流通の体制が一段階拡大していたことが、こうした点からもうかがえます。

シンプルなアートワークに込められた工夫

『カーペンターズ(Carpenters)』のアルバム・アートワークは、薄いクリーム色の地に茶色のロゴがエンボス加工された、非常に簡潔なデザインが採用されました。この外観から、海外では「タン・アルバム(Tan Album)」と呼ばれることもあります。

アメリカおよびカナダ盤では、封筒を思わせるフラップ付きの特殊仕様となっており、フラップを開くことで中からリチャードとカレンのポートレイトが現れる仕掛けが施されていました。外観の控えめさとは対照的に、開いたときに初めて姿を見せる構成は、アルバム全体の印象をより印象深いものにしています。ただし、この仕様は製造コストが高かったため、採用された地域は限られました。

日本でのデザインとタイトルの変遷

日本では、『ふたりの誓い〜カーペンターズ第3集』というタイトルでリリースされ、アルバムアートワークは、リチャードとカレンのポートレイトが前面に出ており、カーペンターズのロゴが描かれていないデザインが使用されました。そのため、一見すると世界各国でリリースされたものよりも簡素に見えてしまいますが、ジャケットは見開きになっており、中には日本独自の解説や折り込み式の特大写真などが付けられていました。結果的に、アメリカやカナダでリリースされたものよりも見方によっては豪華な仕様となり、日本での人気に拍車をかける一つのきっかけとなりました。

その後、「スーパースター」がヒットしたことを受け、アルバムタイトルも『スーパースター』に変更されました。後に日本でも封筒デザインが採用され、CD化された際も、オリジナルのカバーを踏襲したシンプルなデザインが採用されましたが、タイトルがオリジナルの『カーペンターズ』となったのは2000年に発売されたリマスター盤以降でした。

後年の評価につながっていく一枚

『カーペンターズ(Carpenters )』は、次作以降へと続く要素を数多く含んだアルバムです。楽曲の構成、アレンジの方向性、歌声の扱い方など、本作で示された特徴は、その後の作品の中でも少しずつ形を変えながら受け継がれていきました。制作状況や当時の環境を踏まえて聴くことで、このアルバムが持つ意味合いをより立体的に感じ取ることができます。

このアルバムからのシングル・カット

  • 雨の日と月曜日は
    (1971年2位)

  • ふたりの誓い
    (1971年3位)

  • スーパースター
    (1971年2位)

著者コレクション

封筒型ジャケ、丸みのあるエンボスロゴ、カンパニースリーヴ

A&M SP3503-P3
A&M SP3504-P3

封筒型ジャケ、平に浮き上がったエンボスロゴ、カンパニースリーヴなし

T1 A&M SP3503 T1
T1 A&M SP3504 T1

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曲目リスト

* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* シングル・チャートは特に記載がない限り、ビルボード・ホット100を参照しています。

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村田 博幸
Hiroyuki Murata
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