遥かなる影

Close To You

  • 初回発売日:
    1970年8月19日

  • レーベル:
    A&M

  • プロデュース:
    ジャック・ドーアティー

カーペンターズを一躍スターダムへと押し上げた作品

1970年にリリースされたカーペンターズのアルバム『遥かなる影(Close to You)』は、彼らの音楽活動において転機となった重要な作品です。このアルバムは、カレンとリチャード・カーペンターの兄妹デュオによる、メロディアスで感情豊かな音楽が詰まった作品であり、彼らを一躍スターダムに押し上げました。

アルバムの特徴

『遥かなる影』は、1970年にリリースされたカーペンターズのセカンド・アルバムです。このアルバムは、彼らのデビュー・アルバム『オファリング(Offering)』から一転し、より洗練されたサウンドと名曲の数々を収録しています。特に、ポール・ウィリアムスやバート・バカラックといった著名な作曲家たちの楽曲が多く採用されており、その結果、アルバムは大ヒットとなりました。

リチャードの音楽的才能と、カレン・カーペンターの深みのあるボーカルが見事に融合し、多くの名曲が完成しましたが、特筆すべきはリチャード・カーペンターとジョン・ベティス共作の「クレセント・ヌーン(Crescent Noon)」の存在です。

この楽曲は、1969年のメジャーデビュー直前に録音された未発表音源やアセテート盤といった、いわゆる一次資料的な段階からすでにリチャードの手によって温められていたものです。本作への収録にあたって、それら初期の断片はリチャードの緻密な再構築によって、アルバムの格にふさわしい芸術的なアレンジへと昇華されました。

デビュー前の野心的な習作が、カレンの歌声を得て「完成された音楽遺産」へと変貌を遂げたプロセスこそ、本作を名盤たらしめている核心と言えます。

アルバムがリリースされた時の社会情勢

このアルバムがリリースされた当時、アメリカはヴェトナム戦争の真っ只中であり、社会全体が大きな不安に包まれていました。また、1960年代の公民権運動を経て、社会的な緊張が高まっていた時期でもありました。このような状況の中で、人々の心は疲れ切っており、平和や安らぎを求める声が高まっていました。

カーペンターズの音楽は、そんな時代背景の中で多くの人々の心に響きました。リチャード・カーペンターの優れた編曲とカレン・カーペンターの透明感あふれるボーカルは、まるで心の癒しとなるような優しさと温かさを持っていました。特にこのアルバムは前作の『涙の乗車券』とは異なり、ジョン・ベティスとリチャード・カーペンターのコンビが作るオリジナル曲に加え、ポール・ウィリアムスやバート・バカラックといった著名な作曲家たちの楽曲を取り入れ、より洗練されたサウンドを実現しています。

リリース後、このアルバムはアメリカのみならず世界中で大ヒットし、多くの音楽ファンに愛され続けています。社会的な不安と混乱の中で、人々に平和と安らぎを提供した『遥かなる影』は、カーペンターズの音楽の魅力を存分に示した一枚であり、その評価は今なお高いものがあります。

アルバム・ジャケットの変遷とプレス工場

このアルバムは1970年に発売されましたが、同じ年の中でもジャケットにちょっとした変化が見られます。初期のジャケットは落ち着いたシルバーで、おもて面の右上にはA&Mのロゴはなく、型番「SP 4271」だけが書かれていました。裏面を見ると、下中央にA&Mのロゴがあり、その右にはアメリカレコード協会(RJAA)のロゴが並んでいました。

ところが、同じ年の後期に出たアルバムでは、シルバーの部分が少し青みがかったグレーになり、おもて面の右上にはA&Mのロゴが加わりました。裏面は右下にA&Mのロゴだけが残り、アメリカレコード協会のロゴはなくなっています。こうした変化は、アルバムがより広く出回る中でデザインを少し整えたもののようです。

プレス工場についても少し触れておくと、この作品はA&Mのお膝元であるモナーク工場に加え、カリフォルニア州サンタマリア、インディアナ州テレホート、ニュージャージー州ピットマンでもプレスされました。モナーク盤は、他工場のレーベルと比べてアルバム・タイトルのフォントが太く、レーベルの横幅いっぱいに配置されている点が特徴です。特にサンタマリア工場でのプレスが加わったことで、全米からの注文にもスムーズに対応できる体制が整えられました。こうしたジャケットやレーベルの違い、そしてプレス体制の広がりからも、当時のアルバム人気の高さを感じ取ることができます。

偉大な作曲家たちの楽曲とその後への影響

『遥かなる影(Close To You)』は、カーペンターズのアルバムの中でも特に人気の高い一枚です。このアルバムを通じて、彼らは一躍スターの座を手に入れ、その後も数多くの名曲を生み出し続けました。このアルバムは、前作『涙の乗車券』の雰囲気を一部踏襲しながらも、より洗練されたサウンドに仕上がっています。特にポール・ウィリアムスやバート・バカラックといった偉大な作曲家たちの楽曲を取り入れたことにより、アルバム全体が高い完成度を誇り、多くの人々に愛される作品となり、後にリリースされる作品に多大なる影響をもたらしました。

当時の社会情勢の中で多くの人々に平和と癒しをもたらし、カーペンターズの音楽の魅力を存分に示した一枚です。このアルバムで見せた音楽的な進化と試みは、その後の作品にも大きな影響を与えました。カーペンターズの音楽を語る上で、このアルバムは欠かすことのできない存在であり、彼らの魅力を存分に味わうことができる一枚です。

このアルバムからのシングル・カット

  • 愛のプレリュード
    (1970年2位)

  • 遥かなる影
    (1970年4週連続1位、キャッシュボックス6週連続1位)

著者コレクション

シルバージャケ、表面A&Mロゴなし、裏面A&MとRIAAロゴ有、背表紙プリントなし、シュリンク有、カンパニースリーヴなし

A&M SP4441-M2 (MR) △15109 (13)
A&M SP4442-M2 (MR) △15109-X (20)

シルバージャケ、表面A&Mロゴなし、裏面A&MとRIAAロゴ有、シュリンク有、『オファリング(Offering)』と同じカンパニースリーヴ

A&M SP4441-P3
A&M SP4442-P2

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曲目リスト

* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* シングル・チャートは特に記載がない限り、ビルボード・ホット100を参照しています。

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村田 博幸
Hiroyuki Murata
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