カーペンターズの黄金期に発売された名盤中の名盤
1973年、カーペンターズは彼らの音楽活動の中でも特に重要なアルバム『ナウ&ゼン(Now & Then)』を発表しました。このアルバムは、彼らの黄金期を象徴する作品であり、リチャードとカレン・カーペンターの音楽的な成熟と創造性が詰まった一枚です。独自のアレンジとハーモニーで知られるカーペンターズが、オリジナル曲と往年のヒット曲を融合させたこのアルバムは、私たちにとっても忘れられない名盤となりました。
アルバムの背景
『ナウ&ゼン(Now & Then)』は、A面とB面で異なるコンセプトを持つユニークなアルバムです。A面にはカーペンターズが自らのスタイルでアレンジしたオリジナル曲が収録されており、B面には1950年代から1960年代の名曲のカバーが収められています。このアルバムは、彼らの多忙なスケジュールの中でレコーディングされたため、限られた時間の中で最大限の創造力を発揮することが求められました。その結果、オリジナル曲とカバー曲のバランスが取れた、バラエティに富んだ内容となっています。
このアルバムの制作には、リチャード・カーペンターの卓越したアレンジ力とカレン・カーペンターの柔らかく情感豊かなボーカルが大きく貢献しています。特に、リチャードの音楽的なヴィジョンが明確に反映されたA面の曲は、カーペンターズの音楽的進化を感じさせるものとなっています。一方、B面のカバー曲は、彼らのルーツと音楽的な背景を垣間見ることができる貴重な内容です。
アルバムのアートワーク
『ナウ&ゼン(Now & Then)』のアートワークもまた、特筆すべき点の一つです。このアルバムは、特徴的な3面見開きのジャケットを採用しており、彼らが当時住んでいたダウニーの家と、その手前にリチャードの自慢のフェラーリが描かれています。このジャケットは、彼らの私生活と音楽的なアイデンティティを象徴するものであり、ファンにとっても興味深いデザインとなっています。
このアートワークは、彼らの音楽と同様に、細部にまでこだわり抜かれており、その時代の雰囲気を見事に捉えています。リチャードのフェラーリは、彼の成功と豊かさを象徴すると同時に、彼の趣味と個性を反映しています。このジャケットは、彼らの音楽だけでなく、そのライフスタイルまでも感じさせるものとなっています。
驚くべきことに、このアートワークのデザインを手がけたのは日本人デザイナーである長岡秀星氏です。彼の手がけたアートワークは、カーペンターズの音楽と同様に、細部にまでこだわり抜かれており、その時代の雰囲気を見事に捉えています。このアルバムジャケットは、彼らの音楽の魅力を視覚的にも表現したものであり、アルバム全体の印象をより豊かにしています。
初期プレスに見る発売当時のにぎわい
『ナウ&ゼン(Now & Then)』は発売前から注目度が高く、アメリカ国内では複数のプレス工場が同時に動く体制で生産が進められました。実際に確認されている工場は、A&Mのお膝元であるモナーク、同じくカリフォルニア州にあるサンタマリア、ニュージャージー州ピットマン、そしてインディアナ州テレホートの4か所で、いずれもA&M作品を数多く手がけてきた工場です。ひとつのアルバムをこれだけ多くの工場で同時にプレスしていたことからも、この作品に寄せられていた期待の大きさがうかがえます。
その影響はレコード本体だけでなく、付属するインナースリーヴにも表れています。収録曲の歌詞とリチャードが所有するクラシックカーが描かれた専用のカスタムインナースリーヴが有名で、本来このアルバムにはこれが挿入されるはずですが、発売直後の一部の盤では製作が追いつかず、A&Mのカンパニースリーヴが封入された状態で出荷されたものが存在します。これは後から差し替えられたものではなく、当時の状況の中で実際に流通していた仕様と考えられています。
そうした細かな点に目を向けることで、1973年当時の慌ただしい制作・出荷の様子や、このアルバムがいかに多くの人に求められていたかを、より身近に感じ取ることができます。
カーペンターズの日本びいき
カーペンターズは、その音楽と同じくらい、日本への深い愛情でも知られています。特にカレンとリチャード・カーペンターは、日本文化に対する強い興味を抱いていました。彼らの日本びいきは、単なるファンの域を超え、具体的な行動として現れました。
彼らは、カリフォルニア州ダウニーの自宅の裏庭に、日本庭園を作り上げました。石庭や池、そして美しい植物が配置されたこの庭園は、彼にとって心の安らぎを提供する場所であり、日本への敬意を表現する一つの方法でした。自宅の裏庭にある日本庭園は、彼の創造性と細部へのこだわりを反映しています。
また、カーペンターズは日本での公演でも、その愛情を余すところなく示しました。特にこのアルバムに収録されている「シング(Sing)」を、日本公演では特別に日本語バージョンを用意し、観客を喜ばせましたことは有名で、カレンの美しい歌声と、児童合唱団の純粋な歌声が融合し、観客に感動を与えました。このような演出は、カーペンターズの日本のファンに対する感謝の気持ちを表すと共に、彼らがいかに日本文化を尊重し、愛していたかを示すものでした。
カーペンターズの魅力と創造力を詰め込んだ一枚
『ナウ&ゼン(Now & Then)』は、カーペンターズの黄金期を象徴する名盤です。A面とB面の異なるコンセプトや、オリジナル曲とカバー曲のバランス、そして特徴的なアートワークが、このアルバムを特別なものにしています。リチャードとカレン・カーペンターの音楽的な才能と創造力が詰まったこのアルバムは、今なお多くのファンに愛され続けています。
彼らの音楽は、時代を超えて人々の心に響き続けており、『ナウ&ゼン』はその一つの象徴と言えるでしょう。このアルバムを聴くことで、カーペンターズの魅力を再確認できると同時に、彼らの音楽が持つ普遍的な価値を感じることができます。
このアルバムからのシングル・カット
シング
(1973年3位)イエスタデイ・ワンス・モア
(1973年2位)
著者コレクション
三面見開きジャケ、カスタムインナースリーヴ有
A&M SP3555-M3-EX (MR) △17883 (14)
A&M SP3556-M3-EX (MR) △17883-X (13)
三面見開きジャケ、カンパニースリーヴ“Preserve The Sound Outside”有
A&M SP3555-S1
A&M SP3556-S1
三面見開きジャケ、カスタムインナースリーヴ有
A&M SP3555-S2
A&M SP3556-S1
曲目リスト
* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* シングル・チャートは特に記載がない限り、ビルボード・ホット100を参照しています。
