初回発売日:
1990年3月
レーベル:
A&M - ポリドール
プロデュース:
リチャード・カーペンター
1990年にイギリスで発売されたカーペンターズのコンピレーション・アルバム『ゼア・グレイテスト・ヒッツ(Their Greatest Hits)』は、彼らの名曲をぎゅっと詰め込んだ一枚です。このアルバムは、特にイギリスのファンのために作られたもので、カーペンターズの音楽の魅力を改めて感じさせてくれる内容になっています。
ちなみに、このアルバムは最初イギリスで『オンリー・イエスタデイ(Only Yesterday)』という名前でリリースされました。しかし、全世界で発売されるときに、より多くの人に親しんでもらえるように『ゼア・グレイテスト・ヒッツ』というタイトルに変更されました。
このアルバムの最大の特徴の一つは、リチャードによるリミックスが施された楽曲で編成されていることです。カーペンターズの楽曲は、リチャードの細やかなプロデュースとアレンジによってその魅力が際立っていますが、今回のアルバムでは特にリミックスに焦点が当てられています。
アルバムの曲目リストには、リミックスであることが書かれています。リチャードが手掛けたリミックスは、オリジナルバージョンに比べ、音の透明感やバランスがより現代的なものとなっています。例えば、「スーパースター(Superstar)」や「イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)」といった楽曲では、彼が改めて施したリミックスによって、楽器の音色やカレンの低い声が一層際立ち、より透明感あるサウンドに進化しています。
リチャードが手を加えることで、カーペンターズの曲は時代を超えてさらに輝きを増しているように感じられます。
このアルバムには、カーペンターズの最も愛される楽曲が数多く収録されています。「イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)」や「トップ・オブ・ザ・ワールド(Top of the World)」、「スーパースター(Superstar)」など、彼らを象徴する名曲が含まれており、これらの曲はカレン・カーペンターの温かみのあるボーカルと、リチャード・カーペンターの緻密なアレンジが光る作品です。それぞれの楽曲は、時代を超えて多くの人々に支持され続けています。
「イエスタデイ・アンス・モア(Yesterday Once More)」は、1973年にリリースされたアルバム『ナウ&ゼン(Now & Then)』からのシングルで、ノスタルジックな雰囲気を持つ一曲です。この曲では、カレンのボーカルが特に際立ち、彼女の独特の感受性が曲全体に広がります。このアルバムに収録するにあたり、リチャードによるリミックスが加えられています。
「トップ・オブ・ザ・ワールド(Top of the World)」は、1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー(A Song for You)』に収録された楽曲で、明るく伸びやかなカレンの歌声が印象的です。この曲は、リリース当初から多くの人々に愛され、カーペンターズの代表曲として知られています。このアルバムには1973年にアメリカでシングル・カットされた際に新しく録音されたバージョンが収録されています。
さらに、「スーパースター(Superstar)」は、カレンの切ない歌声が胸を打つバラードです。この曲は、もともとリオン・ラッセルによって書かれたものでしたが、カーペンターズがカバーすることで新たな命を吹き込み、大ヒットとなりました。こちらもこのアルバムのためにリミックスされています。
本作品は、イギリス市場向けに特別に編成されたアルバムであり、イギリスで特に人気が高かった楽曲がバランスよく収められています。その中でも「星空の旅立ち(Calling Occupants of Interplanetary Craft)」は、特筆すべき一曲です。
この曲は、1977年のアルバム『パッセージ』に収録され、ユニークなテーマと壮大なアレンジで注目を集めました。オリジナルはカナダのバンド、クラトゥによって1976年にリリースされましたが、カーペンターズによるカバーはその知名度を大いに高めました。宇宙との交信をテーマにしたこの楽曲は、特にイギリスでのファン層から強い支持を受けました。
「星空の旅立ち(Calling Occupants of Interplanetary Craft)」の収録は、カーペンターズがポップスだけでなく、より実験的な音楽にも挑戦し、その範囲を広げていたことを示しています。この曲はカレンの特徴的なボーカルと、リチャードのダイナミックなアレンジが融合し、他の楽曲とは一線を画す壮大なサウンドを生み出しています。
アルバムの冊子には、『カレン・カーペンター〜栄光と悲劇の物語』の著者である、レイ・コールマンによる解説が掲載されています。
彼の視点で、カレンの歌声の魅力や、二人が音楽制作で大切にしていたものが語られています。ファンにとっては、楽曲を聴くだけでなく、彼らの音楽に込められた思いを知ることができる特別な一文です。
このアルバムは、イギリス国内で非常に高い反響を受け、リリース後すぐにチャートにランクインしました。このアルバムは、カーペンターズの音楽が持つ普遍的な魅力を改めて証明する一枚であり、彼らの楽曲が持つ多様な音楽性を再確認できる内容になっています。
アルバムに収録されている楽曲は、単なるヒット曲の寄せ集めではなく、カーペンターズの音楽的な進化を感じさせる選曲となっています。初期のシンプルで優雅な楽曲から、後期のより複雑で実験的な楽曲まで、彼らの音楽がどのように変化し、発展していったかを追体験できる内容です。
『ゼア・グレイテスト・ヒッツ』は、カーペンターズの音楽を初めて聴く人にも、長年のファンにとっても、彼らの音楽の魅力を再確認する絶好のアルバムです。イギリス市場向けに特別に編成されたこのアルバムを通じて、カーペンターズの音楽が持つ力を改めて感じることができるでしょう。
イエスタデイ・ワンス・モア(リミックス)
Yesterday Once More (Remix)
1973年のアルバム『ナウ&ゼン(Now & Then)』で発表されたカーペンターズの代名詞的な名曲。ラジオから流れるかつてのヒット曲を懐かしむノスタルジックな世界観とカレンの低音の魅力が完璧にマッチしています。本作に収録されているのは1985年のリミックス・バージョンで、リチャードの手によってドラムやベースのトラックが当時の最新機材で一部差し替えられ、音の輪郭と現代的なダイナミクスが大幅に強化されているのが特徴です。
スーパースター(リミックス)
Superstar (Remix)
リオン・ラッセルらのペンによる、グルーピーの切ない恋を描いた1971年のアルバム『カーペンターズ(Carpenters)』収録の情感あふれるバラード。カレンの物憂げなボーカルは、ほぼ初見のワンテイクで録音されたという伝説を持ちます。本作の1985年リミックス版では、印象的なハープシコード風のシンセサイザーやリズムセクションのバランスが整えられ、よりドラマチックな立体感が引き出されています。
雨の日と月曜日は(リミックス)
Rainy Days and Mondays (Remix)
1971年のアルバム『カーペンターズ(Carpenters)』に収録されたセンチメンタルな楽曲。理由のない憂鬱な気分の拠り所を歌う世界観に、トミー・モーガンによる哀愁漂うハーモニカのソロが絶品です。本作の1985年リミックス版では、カレンのボーカルの生々しさが際立ち、バックのエレキピアノやストリングスとの分離がよりクリアになっています。
トップ・オブ・ザ・ワールド(シングル・ミックス)
Top of the World (Single Mix)
当初は1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー(A Song for You)』の1曲でしたが、日本を含む世界的な大ヒットを受けて1973年に全米でもシングルカットされました。その際、リチャードはカレンのリードボーカルを全面的に録り直し、バディ・エモンズが演奏するペダル・スチール・ギターを大々的にフィーチャーしたカントリー調のポップなアレンジへと生まれ変わらせました。本作にはそのお馴染みの1973年シングル・ミックスが収録されています。
涙の乗車券
Ticket to Ride
ビートルズの「涙の乗車券」をカバーした、1969年のデビューアルバム『オファリング(Offering)』(のちに『涙の乗車券(Ticket to Ride)』に改題)の収録曲。原曲のアップテンポなロックを、リチャードの天才的な編曲によって重厚かつドラマチックなスロー・バラードへと変貌させました。彼らのメジャーデビューのきっかけとなり、初期の卓越した音楽センスを証明した記念碑的ナンバーで、ここでは1973年のミックスで聴くことができます。
愛にさようならを(リミックス)
Goodbye to Love (Remix)
1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー(A Song for You)』の収録曲。おっとりとしたポップ・バラードの終盤に、トニー・ペルーソによる激しいディストーション・ギターのソロを導入し、のちの「パワー・バラード」の先駆けとなった革新的楽曲です。本作の1985年リミックスにより、ストリングスの広がりと大サビのギターソロの破壊力がさらに鮮明に蘇っています。
マスカレード
This Masquerade
リオン・ラッセルのカバーで、1973年のアルバム『ナウ&ゼン(Now & Then)』に収録されたカーペンターズのジャジーで大人びた側面を代表する名曲。カレンの深く落ち着いた低音ボーカル、リチャードの洗練されたピアノ即興演奏、そして哀愁を帯びたフルートの音色が美しくもビターな夜の雰囲気を醸し出します。本作には1973年のオリジナル・ミックスがそのまま採用されています。
ハーティング・イーチ・アザー
Hurting Each Other
1960年代の楽曲をカバーし全米2位を記録した、1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー(A Song for You)』の収録曲。愛し合いながらも傷つけ合ってしまう男女の葛藤を歌っています。リチャードとカレンによる、何層にも重ねられた重厚かつ美しいバックボーカル(多重録音コーラスワーク)の真髄が味わえる一曲で、ここでは1985年のリミックスが収録されています。
ソリティア
Solitaire
ニール・セダカ作曲による、孤独な男の心をトランプの「ソリティア」に例えた名バラードで、1975年のアルバム『緑の地平線〜ホライゾン(Horizon)』に収録。カレン自身は最初この曲の重さをあまり好んでいなかったとされますが、彼女の持つ独特の陰影と表現力が最大限に発揮されたファン人気の高い名演です。本作には1975年のオリジナル・ミックスが収録されています。
愛のプレリュード(リミックス)
We've Only Just Begun (Remix)
1970年のアルバム『遥かなる影(Close to You)』に収録された楽曲。元々は銀行のテレビCMソングだった短いメロディをリチャードが見出し、壮大なポップ・バラードへと発展させました。アメリカでは結婚式の定番曲として愛され続けています。本作に収録されている1985年のリミックス版では、中核をなすオーバーダビング・コーラスの透明感がさらに向上しています。
遠い想い出
Those Good Old Dreams
後期の傑作アルバム『メイド・イン・アメリカ(Made in America)』(1981年)のオープニングを飾った、爽やかで前向きなカントリー・ポップ。カレンの優しく弾むようなボーカルと心地よいバンジョーの響きが、初期の輝きをモダンにアップデートしたような安心感を与えてくれます。本作にはアルバム発表当時の1981年オリジナル・ミックスが収録されています。
プリーズ・ミスター・ポストマン
Please Mr. Postman
マーヴェレッツやビートルズで知られるオールディーズの名曲をカバーし、全米1位を獲得した1975年のアルバム『緑の地平線〜ホライゾン(Horizon)』の収録曲。リチャードによるポップで分厚いハンドクラップ風のアレンジと、カレンの本領発揮と言える小気味よいドラミングが完全に一体となった、70年代ポップスの金字塔です。本作には1975年のオリジナル・ミックスが収録されています。
愛は夢の中に
I Won't Last a Day Without You
ポール・ウィリアムズ作の名曲。1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー(A Song for You)』に収録され、1974年にシングルカットされる際、きらびやかなアレンジとベースラインに変更されました。過酷な都会の孤独の中でも「あなたさえいれば1日だって耐えられる」と歌うメロディ、温かみのあるボーカルが印象的で、日本でもとりわけ人気の高いナンバーです。本作には1974年のシングル・ミックスが採用されています。
タッチ・ミー
Touch Me When We're Dancing
バカンスを感じさせる洗練された大人のAORサウンドが特徴の、1981年のアルバム『メイド・イン・アメリカ(Made in America)』収録曲。カレンの健康状態が悪化していた時期の録音ですが、その歌声の艶は失われておらず、彼らにとって事実上最後となった全米トップ20入りのヒットシングルとなりました。本作には当時の1981年オリジナル・ミックスが収録されています。
ジャンバラヤ
Jambalaya (On the Bayou)
ハンク・ウィリアムズのカントリー古典をカバーした、1973年のアルバム『ナウ&ゼン(Now & Then)』の収録曲。リチャードの軽快なアップテンポ・アレンジと、カレンの陽気なボーカルにより、日本やイギリスなどの海外で特に爆発的な大ヒットを記録しました。本作には当時の1973年オリジナル・ミックスが収録されています。
ふたりの誓い
For All We Know
映画『ふたりの誓い』の主題歌をカバーしてアカデミー歌曲賞を受賞した1971年のアルバム『カーペンターズ(Carpenters)』収録曲。人生の儚さと、だからこそ「今この瞬間を愛し合おう」というメッセージを優しく歌い上げています。本作には1971年のオリジナル・ミックスが収録されています。
ふたりのラヴ・ソング
All You Get from Love Is a Love Song
1977年のアルバム『パッセージ(Passage)』収録曲。軽快なディスコ/ポップ調のリズムに乗せて失恋の皮肉をファンキーに歌う異色作です。トニー・ペルーソによるサックスソロも含め、中期カーペンターズの素晴らしいグルーヴ感を楽しめる隠れた名曲で、本作には1977年のオリジナル・ミックスが収録されています。
遥かなる影
(They Long to Be) Close to You
バート・バカラック不朽の名曲をカバーして彼らに初の全米1位をもたらした1970年のアルバム『遥かなる影(Close to You)』収録曲。カレンの耳元で囁くような圧倒的な歌唱、完璧なピアノ、フリューゲルホルンのソロなど、すべてが奇跡的なバランスで構築されたポップス史上の傑作です。本作には1985年のリミックスが採用されています。
オンリー・イエスタデイ
Only Yesterday
アルバム『緑の地平線〜ホライゾン(Horizon)』(1975年)からのビッグヒット。暗い過去(Yesterday)に別れを告げ、輝かしい愛を見つけた喜びを、リチャード渾身の「ウォール・オブ・サウンド(音の壁)」的な分厚いアレンジで力強く描き出しています。本作には、シングル盤としてリリースされた当時の1975年オリジナル・シングル・エディットが収録されています。
星空の旅立ち(リミックス)
Calling Occupants of Interplanetary Craft
(The Recognised Anthem of World Contact Day) (Remix)
カナダのプログレバンド「クラトゥ」のカバー(1977年のアルバム『パッセージ(Passage)』収録)。宇宙の知的生命体に地球からコンタクトを試みる壮大なSFテーマの楽曲です。本作に収録されているのは、未発表曲集『Lovelines』制作に伴う1989年のリミックス版。冒頭の宇宙人DJ風のセリフ演出や全体のミックスバランスがシャープに整理され、リチャードが理想としたドラマチックな7分超えのフルサイズで堪能できます。
* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* こちらの作品はLPレコードでも発売されましたが、発売時の時代背景を考慮し、曲目表記はCDに準拠しています。
村田 博幸
Hiroyuki Murata
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