涙の乗車券

Ticket To Ride

  • 初回発売日:
    1970年11月10日

  • レーベル:
    A&M

  • プロデュース:
    ジャック・ドーアティー

カーペンターズの記念すべきデビュー・アルバム

1970年代のアメリカンポップスを語る上で欠かせない存在であるカーペンターズ。そのデュオの始まりを告げるアルバムが『涙の乗車券(Ticket to Ride)』です。このアルバムは、カレンとリチャード・カーペンター兄妹による、繊細で感情豊かな音楽が詰まった作品であり、彼らの音楽的才能を世に知らしめる第一歩となりました。

このアルバムは、もともと『オファリング(Offering)』というタイトルでしたが、デビュー・シングルである『涙の乗車券(Ticket to Ride)』に改題されました。

アルバム・タイトル改題の経緯

1969年に『オファリング(Offering)』として発表されたこのアルバムは、スタジオ・レコーディングが終わっていざ発売となる段階でハリウッドの近くにある公園で撮られた写真がアルバムのジャケットとして使われましたが、リチャードとカレンはこの写真が気に入っていませんでした。そこでジャケット写真の差し替えを申し入れたいという気持ちがあったものの、当時新人であった彼らにとってこの申し入れは非常にハードルが高いものでした。

しかし、翌1970年に「遙かなる影」が大ヒットし、ビルボード・チャートで4集連続全米1位を獲得し、カーペンターズの名が世に知れ渡るようになった際、デビュー・アルバムである本作品のジャケットが差し替えられ、タイトルもデビュー・シングルの「涙の乗車券」に改題されました。

アルバムの特徴と背景

『涙の乗車券(Ticket To Ride)』は、カーペンターズの前身バンドであるスペクトラム時代の楽曲からアレンジを加えた作品がいくつか収録されています。リチャード・カーペンターの編曲能力とカレン・カーペンターのボーカルが見事に融合したアルバムであり、60年代を彩ったビートルズをはじめ、様々なアーティストの影響が色濃く反映されています。

アルバム全体には、60年代のメロディアスなポップサウンドと複雑なアレンジが取り入れられており、リチャード・カーペンターの鍵盤楽器とカレン・カーペンターの独特な声質が巧妙に融合されています。リチャードは、クラシック音楽やジャズから影響を受けた彼の音楽的知識を最大限に活かし、カレンの温かく繊細な声を引き立てるアレンジを施しました。

また、『涙の乗車券(Ticket To Ride)』のもう一つの特徴は、のちに発表される作品とは異なり、リチャード・カーペンターが手がけたオリジナル曲が多数収録されていることです。これにより、カーペンターズの音楽的多様性と才能が存分に発揮されています。アルバムの元々のタイトルである『オファリング(Offering)』には、彼らの音楽が聴く者に対する「捧げ物」であるという意味が込められており、その意図が反映された内容となっています。

彼の作曲と編曲の才能は、このアルバムで初めて本格的に発揮されました。例えば、「Your Wonderful Parade」や「All I Can Do」といった曲は、リチャードの独特な感性が表現されています。彼のアレンジは、クラシック音楽の影響を受けた複雑なコード進行や、美しいメロディラインが特徴であり、カーペンターズの音楽スタイルの基盤を築きました。

カレンのボーカルは、このアルバムで初めて広く世に知られることになりました。彼女の声は、当時の他の女性シンガーとは一線を画しており、その独特の深みと温かみが多くの人の心を魅了しました。特に、「Someday」や「Eve」といったバラードでは、カレンの感情豊かな表現力が際立っています。彼女の歌声は、私たちに対して強い感情の共鳴を引き起こし、カーペンターズの音楽がただのポップソングではなく、心に深く響くものであることを証明しています。

1970年再発盤『涙の乗車券』まわりの話

1970年に出た『涙の乗車券』の再発盤は、プレス工場そのものは『オファリング(Offering)』と変わらず、モナーク、テレホート、ピットマンが使われています。ただし、同じ時期の『遥かなる影』にはサンタマリア・プレスがあるのに、この盤にはそれがありません。というのも、『涙の乗車券』はあくまで『オファリング(Offering)』の改題盤で、サンタマリア由来のラッカーが作られていなかったため、結果としてサンタマリアでプレスされることはなかった、というわけです。

再発とはいえ、切り替えはきれいに進んだわけではなく、レーベルが『Offering』のままの個体も混じっています。このあたりは、当時のA&Mが手探りで動いていた様子が、そのまま盤に残っている感じがします。

もう一つ面白いのがインナーです。この頃A&Mは「Reserve The Sound Outside」というキャンペーンを行っていて、自然の風景写真と当時発売中のレコードを紹介するインナーが用意されていました。『涙の乗車券』にも基本的にはこれが入っていますが、それ以前に出回った一部の盤では、中央に穴が開いていて、下のほうにA&Mの住所だけが印刷された無地のインナーが使われています。同じ再発盤でも、こんな違いがあるところが見逃せないところです。

日本での発売

日本で本作がリリースされる際、本国アメリカでは既にシングル「遥かなる影((They Long to Be) Close to You)」が空前の大ヒットを記録していました。その勢いを反映させる形で、日本盤のLPではデビュー・アルバムである本作B面の冒頭に急遽「遥かなる影」が挿入され、アルバムタイトルも原作の「Ticket To Ride」ではなく『遥かなる影』としてリリースされるという、当時の日本のファンに向けた特別な曲構成で発売されました。これにより、日本のファンは彼らの初期の才能と、スターダムにのし上がった瞬間のサウンドを同時に体感することとなったのです。

カーペンターズの才能と成功の予兆

カーペンターズのデビュー・アルバム『涙の乗車券(Ticket To Ride)』は、彼らの音楽活動の始まりを象徴する重要な作品です。ビートルズの影響を受けつつも、リチャード・カーペンターの独創的なアレンジとカレン・カーペンターの卓越したボーカルによって、独自のサウンドを作り上げました。特に「涙の乗車券」と「いつの日か愛に」は、カーペンターズの音楽的才能を余すところなく示しており、彼らのデビュー作としてふさわしい完成度を持っています。

このアルバムは、カーペンターズのその後の成功を予感させるものであり、彼らのファンにとっては必聴の一枚です。カレンとリチャードの音楽的な絆と、彼らの創造性が詰まった『涙の乗車券』は、今なお多くの人々に愛され続けています。このアルバムは、カーペンターズの音楽の魅力を初めて広く示した作品であり、彼らの音楽活動の原点ともいえる重要な作品です。

このアルバムからのシングル・カット

  • 涙の乗車券
    (1969年54位)

著者コレクション

A&M住所記載クリーム色インナースリーヴ有

A&M SP4509 (RE-1) -M2 (MR) △16869
A&M SP4510 (RE-1) -M13-REPL (MR) △16869-X (X2)

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曲目リスト

* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* シングル・チャートは特に記載がない限り、ビルボード・ホット100を参照しています。

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村田 博幸
Hiroyuki Murata
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