初回発売日:
1977年9月23日
レーベル:
A&M
プロデュース:
リチャード・カーペンター
1970年代後半、カーペンターズは新たな音楽の方向性を模索していました。彼らの人気は70年代前半から中頃にかけて頂点を迎えた後、徐々に下降線を辿っており、新たな試みが求められていました。そんな中、1977年に発表されたアルバム『パッセージ(Passage)』は、これまでの彼らの音楽とは一線を画す、挑戦的で多様な作品となりました。このアルバムは、カーペンターズの既存のイメージを打ち破るような斬新なアプローチが取り入れられており、多くのファンや批評家を驚かせました。今回は、カーペンターズが1977年に発表した8作目のアルバム『パッセージ(Passage)』について詳しく見ていきます。
『パッセージ(Passage)』のアートワークは、これまでのカーペンターズのアルバムとは一線を画すものです。まず第一に、そのデザインは非常に奇抜で、五線譜をモチーフにした流れるようなラインが印象的です。五線譜のラインに沿うように描かれた「Carpenters」の文字は、アルバムの音楽的テーマと視覚的にリンクしており、私たちに強烈なインパクトを与えます。
LPジャケットの左下には、小さく”PASSAGE”の文字が印字されており、慎重に目を凝らさなければ見逃してしまうほどの小ささです。このようなデザインは、カーペンターズの従来の作品とは一線を画しており、視覚的な大胆さが感じられます。
さらに、カーペンターズのお馴染みのロゴは一見すると見当たらないが、裏面の下中央に小さく描かれています。この控えめな配置は、アルバム全体のデザインテーマを尊重しつつ、カーペンターズのブランドを保持しています。こうしたアートワークのディテールは、アルバムの音楽的内容と同様に革新的であり、聴衆に新たなカーペンターズの姿を提示しています。
『パッセージ(Passage)』が発表された1977年は、カーペンターズにとって挑戦の年でした。この頃、カレンの健康状態は悪化しており、兄のリチャードも睡眠薬依存を抱えていました。これに伴い、アメリカでのカーペンターズの人気の低迷が彼らの精神状態に大きな影響を及ぼしていました。
この状況を打開するため、カーペンターズは新たな音楽スタイルに挑戦することとなり、その結果が『パッセージ(Passage)』です。このアルバムでは、ポップスやバラードだけでなく、ジャズやカントリー、ラテン音楽、そしてオーケストラといった多様な音楽スタイルを取り入れることで、新しいファン層の開拓が試みられました。
『パッセージ(Passage)』は、音楽の内容だけでなく、レコードとしての作られ方にも少し面白い特徴があります。アメリカ盤のLPは一か所でまとめて作られたわけではなく、当時A&Mが利用していた複数のプレス工場で生産されました。具体的には、ロサンゼルスのモナーク、インディアナ州のテレホート、そしてニュージャージー州のピットマンが知られています。
これらの工場で作られた盤を見ていくと、共通点としてB面のデッドワックスに「RE-1」という刻印が確認できます。この表記は再発売を意味するものではなく、ラッカーを切る段階で何らかの調整が入ったことを示すものです。『パッセージ』のB面は収録時間が長く、曲の後半になるにつれて音の情報量も多くなるため、最初の試作段階で音のバランスやカッティングに手直しが必要になった可能性が高いと考えられます。
理屈の上では、RE-1が付かないB面のラッカーが存在してもおかしくはありません。ただ、現時点で市販盤として確認されている個体はいずれもRE-1付きで、刻印のない盤は見つかっていません。そのため、最初のカットはテストプレスの段階で止まり、修正後のラッカーだけが実際の生産に使われた、という見方が自然でしょう。
さらに掘り下げていくと、同じ「RE-1」表記を持つ盤であっても、プレス工場ごとに音の印象が微妙に異なる点も見逃せません。とくにニュージャージー州のピットマンでプレスされた盤では、B面収録曲「星空に愛を」の冒頭で、トニー・ペルーソのDJにやや強めのエコーが感じられる個体が確認されています。一方、ロサンゼルスのモナーク盤では同じRE-1刻印を持ちながら、そのエコーがほとんど感じられず、DJの輪郭や音の立ち上がりがより明確に聞こえる傾向があります。
この違いは、演奏やミックスそのものが変えられたというよりも、ラッカーを切る段階や工場側の判断による音のまとめ方の差と考えるのが自然でしょう。当時のピットマンでは、音に広がりを持たせる方向の調整が行われることがあり、その結果として、同じRE-1であっても、ややエコー感のある仕上がりになった可能性があります。
こうした細かな違いは音を聴くだけでは気づきにくい部分ですが、レコードを手に取って眺めてみると、この作品がどれだけ慎重に作られたのかが、別の角度から見えてきます。
カーペンターズのアルバム『パッセージ』はこれまでのアルバムと比べて、多様な音楽スタイルと斬新なアレンジが特徴です。アルバム全体を通して、カーペンターズは新しい音楽の方向性を模索し、ポップスだけでなくジャズやクラシックの要素を融合させました。この挑戦的な試みがファンにどのように受け入れられたかについても様々な捉え方がありましたが、彼らの音楽的な成長と実験精神を示す重要な作品として評価されています。『パッセージ(Passage)』は、カーペンターズの多彩な音楽の魅力を再確認できる一枚です。
ふたりのラヴ・ソング
(1977年35位)
泣かないでアージェンティーナ
スウィート・スマイル
(1978年44位、ビルボード・カントリー・チャート6位)
星空に愛を(コーリング・オキュパンツ)
(1977年32位)
二つ折光沢ジャケ
A&M SP5143-M5 INT △22613 (2)
A&M SP5144 (RE-1)-M4 INT △22613-X (7)
二つ折光沢ジャケ、シュリンク有、クラブ盤
A&M SP5143-P2
A&M SP5144 (RE-1)-P2
* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* シングル・チャートは特に記載がない限り、ビルボード・ホット100を参照しています。
村田 博幸
Hiroyuki Murata
>> プロフィールを見る