初回発売日:
1984年
レーベル:
A&M - ポリドール
プロデュース:
リチャード・カーペンター
クリスマスシーズンを彩る音楽をお探しなら、カーペンターズの『クリスマス・ポートレイト・スペシャル・エディション』は絶対に外せない一枚です。このアルバムは、1978年にリリースされた『クリスマス・ポートレイト(Christmas Portrait)』と、1984年の『オールド・ファッションド・クリスマス(An Old-Fashioned Christmas)』の2つのクリスマスアルバムを1枚にまとめたコンピレーション。カレン・カーペンターの透き通るような歌声と、兄リチャードの華麗なアレンジが、ホリデーシーズンの温かいひとときをさらに特別なものにしてくれます。
リチャードとカレンにとって、クリスマスは単なる祝祭以上の意味を持っていました。彼らの両親は敬虔なクリスチャンであり、二人は幼い頃から教会の聖壇から流れる賛美歌や祈りの言葉を日常として育ちました。
そのため、彼らにとってのクリスマス音楽とは、意識して演奏する「仕事」ではなく、自分たちのアイデンティティの一部として自然に刷り込まれたものでした。クリスチャンの信仰において根幹をなすと言っても過言ではない「主の祈り(The Lord's Prayer)」を彷彿とさせるアレンジなどが楽曲の随所に盛り込まれていることからも、彼らにとってこの旋律がいかに生活の一部であり、無意識のうちに血肉化されていたかを物語っています。
1984年にリチャードがカレンの録音を整理し、本作という形で再編纂したのは、単なるベスト盤の公開ではありません。カレンが生涯愛し、彼らの音楽的・精神的バックボーンであった「クリスマスの精神」を、リチャードが自らの手で永遠の遺産へと繋ぎ止めるための、極めてパーソナルで神聖な作業だったのです。
このアルバムで最も注目すべきは、やはりカレンのボーカルです。彼女の声は、クリスマスの喜びや温かさを完璧に表現しています。特に「クリスマス・ソング(The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire))」や「メリー・クリスマス・ダーリン(Merry Christmas Darling)」といった楽曲では、彼女の温かみのある声が私たちの心に直接響き、クリスマスの特別な瞬間を感じさせてくれます。
カレンの透明感のあるボーカルが、このクラシックなクリスマスソングに新たな命を吹き込んでいます。彼女の声は、この歌詞が持つ温かさや懐かしさを見事に表現し、クリスマスの魔法を感じさせます。静かな夜に、心地よい時間を過ごすのにぴったりの一曲です。
1970年に初リリースされ、カーペンターズのクリスマスソングの中でも特に人気が高い曲です。この曲は、遠く離れた愛する人を思う気持ちを歌っており、カレンの優しく切ないボーカルが、私たちの胸を打ちます。クリスマスの夜に、誰かを想いながら聴きたい一曲です。
カレンのボーカルだけでなく、リチャードの卓越したアレンジもこのアルバムの大きな魅力です。彼はピアノやオーケストラの力を巧みに使い、クリスマスの情景を音で描き出しています。特に「アヴェ・マリア(Ave Maria)」や「オー・ホーリー・ナイト(O Holy Night)」などのクラシックなクリスマスキャロルでは、リチャードの繊細なアレンジが楽曲に荘厳な雰囲気を与え、私たちを特別な時間へと導いてくれます。
本作において最も重要な歴史的な楽曲の一つが、この「アヴェ・マリア」の収録です。
1978年のオリジナル・アルバム制作時、最終的なスタンパー刻印の直前という土壇場で、なんと重厚なコーラスがダビングされたマスターテープを紛失するという不測の事態が発生しました。そのため、オリジナルLPではやむなく「コーラスなし」の状態でリリースされましたが、その直後にテープは発見されました。
リチャードが本来意図していた「コーラス入りのアヴェ・マリア」は、1984年の本作においてようやく日の目を見ることとなりました。一度は失われかけたカレンの歌唱の「完成形」を、リチャードが執念とも言える情熱で歴史に繋ぎ止めた事実は、単なる未発表音源の公開を超えた、彼らの音楽に対する誠実さの証明です。
かつての記憶や断片的な録音が時を経て再発見されることがあっても、このようにアーティストが自らの意志で選び抜き、あるべき姿へと結実させた音源こそが、カーペンターズの本質を物語る真実の記録と言えるでしょう。
一方で、リチャードは「キャロル・オブ・ザ・ベルズ(Carol of the Bells)」のような軽快でリズミカルな楽曲でもその才能を発揮しています。この曲では、ピアノとオーケストラが軽快に響き合い、クリスマスの鐘の音をイメージさせるメロディーが耳に残ります。
本作は、カレンの死後にリリースされましたが、彼女のクリスマスへの愛情や彼女が残した音楽を後世に伝えようというリチャードの強い思いが込められています。リチャードは、このアルバムに未発表の録音を収め、カレンの魅力を余すことなく伝えるため、特別な工夫を凝らしました。その結果、カレンの歌声とリチャードのアレンジが一体となった、この感動的なアルバムが生まれたのです。
『クリスマス・ポートレイト・スペシャル・エディション』は、まさにカレンとリチャード・カーペンターが作り上げたクリスマスの夢のような一枚です。カレンの歌声が温かく包み込み、リチャードのアレンジがその音楽を彩ることで、リスナーは心温まるクリスマスの時間を過ごすことができます。このアルバムを聴けば、どんなクリスマスも特別で感動的なものになること間違いなしです。ぜひ、あなたのホリデーシーズンにこのアルバムを加えて、カーペンターズと共に素晴らしいクリスマスを過ごしてみてください。
天なる神には
序曲
Overture
ハッピー・ホリデイ
Happy Holiday
まきびと羊を
The First Noel
おもちゃの行進
March of the Toys
リトル・ジーザス
Little Jesus
ママがサンタにキッスした
I Saw Mommy Kissing Santa Claus
ああベツレヘムよ
O Little Town of Bethlehem
もろびと声あげ
In Dulce Jubilo
ジェス・バンビーノ
Gesu Bambino
あら野のはてに
Angels We Have Heard on High
オールド・ファッションド・クリスマス
An Old-Fashioned Christmas
クリスマス・ワルツ
The Christmas Waltz
楽しいそり遊び
Sleigh Ride
クリスマス・タイム / 夢の中に
It's Christmas Time / Sleep Well, Little Children
メリー・リトル・クリスマス
Have Yourself a Merry Little Christmas
サンタが街にやってくる
Santa Claus is Comin' to Town
クリスマス・ソング
The Christmas Song (Chestnuts Roasting on an Open Fire)
キャロル・オブ・ザ・ベルズ
Carol of the Bells
メリー・クリスマス・ダーリン
Merry Christmas Darling
主は生まれ給いぬ
Christ is Born
オー・ホーリー・ナイト
O Holy Night
ホーム・フォー・ザ・ホリデイズ
(There's No Place Like) Home for the Holidays
メドレー
Medley
サンタ・クロースがやってくる
Here Comes Santa Claus
フロスティ・ザ・スノウマン
Frosty the Snowman
赤鼻のトナカイ
Rudolph the Red-Nosed Reindeer
よき王ウェンセスラス
Good King Wenscelas
ウィンター・ワンダーランド / ホワイト・クリスマス
Winter Wonderland / White Christmas
アヴェ・マリア
Ave Maria
組曲“くるみ割り人形”から
Selections from "The Nutcracker
小さい序曲
Overture Miniature
金平糖の踊り
Dance of the Sugar Plum Fairies
リトル・オルター・ボーイ
Little Altar Boy
クリスマスはわが家で
I'll Be Home for Christmas
きよしこの夜
Silent Night
* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
村田 博幸
Hiroyuki Murata
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