リチャード・カーペンター
〜ピアノ・ソングブック

Piano Songbook

  • 初回発売日:
    2021年10月22日(日本先行)
    2022年1月14日(アメリカ発売)

  • レーベル:
    ユニバーサルミュージック
    デッカ(アメリカ)

  • プロデュース:
    リチャード・カーペンター

リチャード・カーペンターとして初のソロ・アルバム

2021年、リチャードは自身の音楽活動において重要な節目を迎えました。それが、彼の初となるソロ・アルバム『リチャード・カーペンター 〜ピアノ・ソングブック』のリリースです。このアルバムは、リチャードが作曲・編曲したカーペンターズの名曲をピアノで再解釈し、インストゥルメンタルとして表現したものです。ファンにとっても新鮮な視点から彼の音楽に触れられる機会となり、多くの注目を集めました。

アルバムの魅力

リチャードはこれまで、1987年に数名のヴォーカリストを迎えた『タイム(Time)』、1997年にカーペンターズの名曲をオーケストラ用にアレンジした『リチャード・カーペンター 〜新たなる輝き(Pianist, Arranger, Composer, Conductor)』という2枚のソロ・プロジェクトを発表してきました。しかし、一切のゲストやオーケストラを排し、彼が一人でピアノという楽器に向き合った『純粋な意味でのソロ・ピアノ・アルバム』としては、本作が初の試みとなります。これは単なる過去作の延長ではなく、リチャード・カーペンターという一人の音楽家の核心を剥き出しにした、歴史的な転換点と言えるでしょう。

アルバムの構成と選曲

このアルバムには、カーペンターズの代表曲が数多く収録されています。たとえば「愛のプレリュード(We’ve Only Just Begun)」や「遥かなる影((They Long To Be) Close to You)」といった誰もが知る名曲が、ピアノのみで美しく再現されています。これにより、オリジナルバージョンのポップな要素とは異なり、より繊細で感情豊かな音の世界が広がります。

ピアノの音色が持つ温かさとリチャードの丁寧な演奏は、私たちに癒しを与えると同時に、カーペンターズの楽曲が持つ深みや洗練さをさらに引き立てています。

楽曲解釈の新たな一面

このアルバムで特に注目すべき点は、リチャード自身が手掛けたアレンジの妙です。オリジナルのアレンジはポップスとして広く親しまれている一方で、ピアノソロという形で再構成することで、楽曲の本質的なメロディやハーモニーがより際立つようになっています。例えば、「トップ・オブ・ザ・ワールド(Top of the World)」は明るく軽快な印象が強い楽曲ですが、ピアノバージョンではその裏にあるシンプルな美しさを感じることができます。

リチャードは、自身の音楽的ルーツであるクラシックやジャズの要素を取り入れながら、ピアノ演奏を通じて独自の音楽性を表現しています。彼の繊細なタッチと、楽曲への深い理解が、楽曲の再解釈に反映されており、これまで聴き慣れた楽曲でも新たな発見があります。

リチャードのピアニストとしての側面

リチャードは、カーペンターズ時代からピアニストとしての実力を発揮してきましたが、このアルバムでは彼のピアノ演奏が主役です。長年の経験からくる技術と感性が遺憾なく発揮され、各楽曲において、オリジナルの魅力を損なうことなく、新たな表現を与えています。

また、リチャードがどのようにして楽曲を再解釈し、ピアノの音色だけでその世界観を作り上げるかという点にも注目です。オーケストラやボーカルがない分、ピアノの一音一音に集中でき、その表現力の高さが際立ちます。

リチャードの音楽への愛

このアルバムには、リチャードが長年にわたって培ってきた音楽への深い愛と敬意が感じられます。カレンとの活動を通して築き上げた音楽は、今もなお多くの人々に愛され続けていますが、このアルバムではその音楽を再び新しい形で提示しています。彼にとって、これまでの音楽活動の集大成として、自身のルーツや創造性をピアノという形で表現することができたのではないでしょうか。

ピアノ一台に込められた制作の背景

このアルバムが生まれた背景には、日本での出来事がありました。2019年にリチャードが日本のテレビ番組でピアノを演奏した際、その映像を見た海外のレコード会社から「ピアノだけの作品を作ってみてはどうか」という提案を受けたといいます。長年ピアノを弾き続けてきた彼にとって、このアイデアは特別な挑戦というより、ごく自然に受け止められるものだったようです。

録音はできる限りシンプルに行われました。多重録音はせず、ピアノ一台だけで完結させる方針を貫き、スタジオのピアノの音に納得がいかなかったため、自宅で弾き慣れたスタインウェイを運び込んで録音したことも語られています。短時間で集中的に録られた演奏には、作り込みすぎない自然な空気がそのまま残されています。

ボーカルもオーケストラもないからこそ、メロディや和声の美しさがはっきりと伝わります。「遥かなる影」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」といったよく知られた曲も、ピアノだけで聴くと印象が変わり、リチャードが長年向き合ってきた楽曲の本質が静かに浮かび上がってきます。今のリチャードだからこそ弾けた、落ち着きと深みのある演奏が、この作品全体を支えています。

カーペンターズの名曲が新たに再解釈されたピアノ・ソロ

リチャード・カーペンターの初のソロアルバム『リチャード・カーペンター 〜ピアノ・ソングブック』は、彼が長年培ってきた音楽への情熱とピアニストとしての才能が存分に発揮された作品です。カーペンターズの名曲がピアノのみで再解釈され、楽曲の持つ新たな魅力が引き出されています。カレン・カーペンターの歌声とはまた違った形で、リチャードの音楽がこれからも語り継がれていくことでしょう。このアルバムは、カーペンターズのファンのみならず、ピアノ音楽を愛するすべての人々にとって、心に響く一枚です。

曲目リスト

* 曲目は初回盤に基づいて表記しています。
* こちらの作品はLPレコードでも発売されましたが、発売時の時代背景を考慮し、曲目表記はCDに準拠しています。

村田 博幸
Hiroyuki Murata
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